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英語校正ツール「Trinka」を使ってみた

Enago
By: 鈴木 康子

Oct 09, 2024|この記事を読むのにかかる時間 : 10分

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英文を書く機会が増えた人にとって、自分の書いた英文を手軽にチェックできるオンラインツールは大変有用です。翻訳会社や英語校正サービスに依頼するほどでもないけれど、ブログやSNSのメッセージでも英文法やスペルのチェックが修正できれば、自信を持って情報を発信することができるでしょう。

最近は、多くのツールがオンラインで利用できるようになっている上、精度が飛躍的に向上しています。問題は、どれを選べばよいか、どれが自分に合うのかが分からないということです。各ツールの特徴などの比較を参照し、無料版・有料版を見比べてみるのも一案ですが、実際に使ってみた体験談も参考にしてみてください。

ひとことで英語校正ツールと言っても、使用しているアルゴリズムが異なれば、強み・弱みも様々です。今回は、エナゴが開発した英語校正ツールTrinka(トリンカ)を使ってみた感触を共有します。
 

Trinkaの特徴

 

2020年にリリースされたAI英文校正ツールTrinkaの大きな特徴のひとつは、学術論文の英文校正などのサービスを提供している「研究支援エナゴ」が開発したことです。さまざまな専門分野の学術論文のデータをもとに開発したことはTrinkaの最大の強みと言えます。

AIを使った英語校正や執筆支援ツールは他にもありますが、汎用性が高い反面、専門用語や学術分野に独特な表現のチェックがうまく機能しなかったり、内容のニュアンスが伝わりにくかったりすることもあります。よって、学術論文としての英語校正とテクニカルライティングのチェックに秀でていることは研究者にとって大きなメリットです。

また、学術分野に最適な文書スタイル(APAまたはAMAスタイルなど)に準じたチェックができる点や、「American English」または「British English」の選択ができる点も研究者には嬉しい機能です。現在のユーザー数は、約40万人とのことですが、ユーザーの中に著名な出版社も含まれていることが信頼の証になると思います。

そして、使い勝手と同時に気になる料金ですが、Trinkaにはベーシック(無料)/プレミアム(月額$20/年間一括払い$80)/プレミアムプラス(年間$125)の3種と法人向けサービスの計4種類があります。法人向けの「Trinka Enterprise」に登録すると、全ての機能をチームで利用できるので、企業や大学・研究機関などが英語での発信力を強化するのに役立つでしょう。

 

実際に使ってみた感触

英語校正ツールを使う際に重要なのは機能と質ですが、同時に操作が簡潔であることも必須です。ツールの利用に慣れている人にとって問題にならないようなことでも、不慣れな人にとっては、使い方が分かりやすいか、チェック結果が見やすいかはツールを選択する際の大切なポイントとなります。英文法の校正そのものについては、色々なツールの比較がオンラインでも見つかるので、それらを参考にしてみてください。ここでは、あくまでも主観的に使ってみた感触をお伝えします。

  • 設定(File Setting)

ログインして新しいファイルの英文校正を行おうとすると、Document Typeが、General/Academic/Legal(新機能)が選べるようになっています。これは論文のようなガチな文章ではなく、カジュアルなメールのやりとりや文書などのチェックをするのにも便利です。逆に、Legalは学術用語とは別の意味で専門用語や独特な表現があるので、これも別タイプとなっていれば言葉の修正ミスや誤用をチェックする際、正確性が高まることでしょう。

ここでAcademicを選択するとスタイルガイドの種類を選択できます。AMA、APA、ACS、AGUはどのエディションかも明示されているので、最新のエディションに準じているか確認できます。どのスタイルガイドに準じればよいのか分からない場合には、None(どれでもない)という選択を使えます。Legalはまだ新しいだけに、一般的なスタイルと米国のThe Redbook、インドのSCI Genderだけですが、今後ここが充実してくれば、外国で就職する際の契約関連文書や国際共同研究の際の法的文書の作成および確認に役立つだけでなく、企業の法務担当などが外国人社員に向けて労務関連の説明する文書のチェックにも使えるようになると思います。

既存のファイルは、自分のPCだけでなくOneDrive、Dropbox、Google Driveからアップロード可能です。ブログのような短い文章であればテキストをエディターにペーストしてしまうほうが早いと思いますが、論文のような長い文章やドキュメントは、研究者/仕事仲間とGoogle DriveやDropboxファイルを共有していることが多いと思うので、使い分けると便利でしょう。小さなことですが、意外とストレスにつながることでもあるので、便利なのは大歓迎です。

  • 英語校正機能

肝心の英語校正機能については、一般的なスペルミスや文法ミスの修正が目的であれば、ツールの選択肢はさらに広がるでしょう。しかし、学術論文における英文校正では、些細なミスや言葉の選択によって言いたいことが伝わらず、論文としての質の低下につながってしまいます。それは避けたいところです。特に科学・技術・工学・数学(STEM)分野では新たな発見や用語の登場も頻繁なので、常に新しい情報を元に判断できることが望まれます。Trinkaは、冗長な表現や余計な言葉がある部分をしっかり指摘してくれました。

有料プランにはなりますが、Proofreadの他に、学術論文では不可欠なCitation Checker(引用チェック)やPlagiarism Checker(盗用・剽窃チェック)を行うことも可能です。引用や盗用は学術論文の執筆において研究倫理にも触発する重大な問題ですが、意図しないミスが含まれていることも否定できないので、英文校正と同じツール上でチェックできるのは効率的です。

  • 専門用語

確かに、一般ではあまり知られていないような、比較的新しい専門用語もスペルチェックでひっかかることはありませんでした。用語によって-sation/-zationと両方あるような場合には、自分の普段使っていない方への修正を提案されているものもありましたが、一貫性を持った修正が示されており、米語/英語の違いであることも分かるように表示されます。新しい用語であればMy Dictionaryに追加することもできます。技術分野や医学・薬学分野など、常に新しい用語が出てくる分野では、膨大なデータに基づくTrinkaの判断と修正機能は非常に有用だと思います。また、米語/英語の切り替えについては、ファイルの校正を始めてからも画面上で簡単に切り替えができるので、最初に選択を忘れても大丈夫でした。

 

ネイティブでないからこそ、意図せず米語/英語が混在していることがあるので、特に投稿論文や公開文書については、英文校正の段階で確認しておくことが大切です。

用語に加え、表現についても修正候補を提案してくれるのは助かります。それ以外、文章の内容に直接影響がなくても、スペル(colourとcolorのようなもの)や数字表記(アルファベットで書くか、算用数字で書くか)など表記の揺らぎまで修正し、統一感のある洗練された文章にしてくれます。こうした細かい点こそ、ツールを使うことで効率的に改善することが可能です。

 

まずはお試しをしてみよう

現在、Trinkaの料金プランは4種類ですが、ベーシック(無料)とプレミアムプランには、利用範囲とサポート内容、ストレージ容量などに制限があります。なので、最初に無料プランで試してみて、用途や使用頻度に応じてプランを選択することをお勧めします。一般的とは言いがたいけれど論文ほどではなく、スタイルも厳格には求められない文章の校正であれば、ベーシックで十分だと思います。Trinkaの機能とサービスを最大限活用できるように、最適なプランを選択してください。

 

まとめ

Trinkaに限ったことではありませんが、英語の校正結果には自分の英文の癖が表れます。私の場合は、冠詞(the/a)をつけ忘れたり余計なところでつけていたり、動名詞の使い方が悪く冗長な文章になっていたり、(日本人にはありがちだと思いますが)ニュアンスの違いで言葉の選択(start/beginなど)が適切でなかったりすることが多々あります。文章の正確性を高め、より自然な文章にするために英語校正ツールを使うことは、効率の面に加え、自分の学習にもなると再確認した次第です。誤用や用語のバラツキ、ミスが減れば、読者にとって読みやすい文章にすることができます。

Trinkaを使ってみた率直な感想としては、これだけ手軽に、しかも速攻で英文チェックをしてくれるのであれば、今後も使ってみようというものです。論文の執筆者や研究者にとって、学術文章に特化したTrinkaの専門性の高いチェック機能は、効率性と正確性の向上につながると思います。しかも、一般の英語校正ツールとは違い、分野独自の用語や表現がエラーとして表示されないのは、思っていた以上にストレスの削減になるようです。

ただし、やはりAIですので、和訳から英訳した文章の校正をしたとき、日本語にありがちな曖昧な主語が「it」などの指示代名詞になっていた部分で、ありえない修正提案が出てきたことがありました(ある国名について、別の国名への修正提案が出たり…)。そこは、人間の目でしっかり最終確認すべきでしょう。

とはいえ、文章の質を向上させたい執筆者にとって強力なツールとなるのは確かです。Trinkaには日々データベースの充実や改善が図られているので、今後の進化にも期待できます。ぜひ、ご自身でも使ってみて、実際の使い勝手や修正提案、仕上がり具合などを確認してみてください。

 

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鈴木 康子

大学では海洋学を専攻。米国留学中に生物学と環境学を学ぶ。主に外資系企業で勤務する中で、翻訳作業に従事。現在は環境NGOに所属。クリムゾンインタラクティブ・ジャパンでは、エナゴ学術アカデミーの記事作成を担当。