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論文原稿を投稿する際に注意すべきこと

Enago
By: エナゴ

Dec 30, 2024|この記事を読むのにかかる時間 : 10分

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研究者は膨大な数の学術雑誌(ジャーナル)の中から、自分の研究論文に適した投稿先を選択する必要があります。多種多様なジャーナルの中には、オンラインのみのジャーナルもあれば、オンラインと紙媒体の両方があるジャーナルもあり、権威のあるジャーナルもあれば、読者層が限定されているジャーナルもあります。
 

どのジャーナルに投稿するにせよ、投稿前にやらなければならないことは同じです。自分の研究に関する分野とジャーナルを調べて投稿先候補を絞り込み、ジャーナルの投稿規程(ガイドライン)に従って原稿の体裁を整え、原稿の長さ(単語数)に注意します。投稿前の準備を怠らないことで、論文が査読プロセスに進む前の処理時間を短縮できるだけでなく、査読を通過して出版に至る可能性も高くなります。
 

ここでは、投稿原稿を準備する際の一般的な流れと注意事項をまとめます。
 

最適なジャーナルの選択


著者はまず、自分の原稿が候補ジャーナルの「aims and scope(目的と対象領域)」に合っていることを確認する必要があります。研究分野の中でもさらに特定の内容を重点的に扱っているジャーナルもあるので、ジャーナルの公式ウェブページに掲載されているaims and scopeの確認は必ず行ってください。

ジャーナルの対象領域を逸脱した原稿を投稿すると、ジャーナル編集部により即座にリジェクトされてしまいますし、たとえ論文がジャーナルに受理されて出版できても、研究成果を届けたい読者層には読んでもらえないことにもなりかねません。出版後に論文が見つけられにくければ、研究のインパクトにも大きな影響を及ぼします。ジャーナルの知名度、読者数・読者層も投稿先ジャーナルを選択する際の重要な要素です。

また、査読プロセスも考慮すべきものです。査読の有無はもちろん、査読から出版までに要する時間、アクセプト率(リジェクト率)、投稿費用なども確認しながら絞り込んでいきます。

この段階で、そのジャーナルの信頼性を確認することも必須です。ジャーナルの評判をチェックし、研究者を食い物にするようなハゲタカジャーナルに投稿してしまわないように注意してください。さらに、投稿規程も確認しておきます。ほとんどのジャーナルには、順守すべき単語数やページ数の制限がありますが、これは分野やジャーナル、論文の種類によっても異なります。ジャーナルによっては図表の数に制限を設け、図表の一部を補足資料への掲載とするものもありますし、グラフィカルアブストラクトの提出が必須のジャーナルもあります。ジャーナルを絞り込んだら、投稿規程をしっかり見ておきましょう。


原稿執筆
 

ジャーナルによっては細かくフォーマットを指示しているものがあります。原稿のページ数や単語数だけでなく、要旨(Abstract または Summary)や序論(Introduction)といったセクションごとに特定の語数制限を設定している場合もあります。その場合には指定された語数に収まるように注意して書かなければなりません。語数だけでなく、余白、行間、引用形式、参考文献の書き方、ファイル形式などは、ジャーナルの指示に従う必要があります。

さらに、原稿の構成も重要な要素です。
 

例えば、序論では、分野全体のことを再説明したり、一般的な知識を並べ立てたりせず、取り上げようとしている具体的な問題を中心に述べる必要があります。結論も重要なセクションで、研究で得られた主な結果を述べ、その研究が研究分野にどのように寄与するかに言及します。
 

研究者が論文に目を通す際、「要旨」と「結論」のセクションに重要なことが書かれていると拾い読みすることも多いので、自分が論文を書く際には、要旨と結論のセクションに記載する内容と文章には細心の注意を払っておくべきでしょう。

 

原稿の構成(セクション) 
 

一般的に論文は以下のセクションから構成されます。 
 

  • 要旨(Abstract または Summary)
  • 序論(Introduction)
  • 方法(Materials and Methods) 
  • 結果(Results)
  • 考察(Discussion):結果(Results)とまとめて書かせるジャーナルもある
  • 参考文献(References)


セクションの順番はジャーナルのガイドラインに明記されているので見落さないようにします。初期評価やテクニカルチェックの際、編集者は投稿原稿がガイドラインの指定する順序に沿って書かれているかをチェックします。ジャーナルが指定する順に従うことで、ジャーナルに掲載される論文の体裁に一貫性を持たせ、読者が研究内容をよりよく理解することにもつながります。
 

図表もジャーナル指定の書式で提示することが肝要です。図表の凡例やキャプション(見出し)、タイトルといった書式や、ファイルサイズ、解像度などはジャーナルによって異なるので必ず確認しておきます。
 

利益相反
 

研究は、誠実であるために最も「中立的」な方法で実施され、科学界、ひいては一般読者にとっても健全な研究結果を提示しなければなりません。個人的な利害関係が、結果の解釈や提示にバイアス(偏り)を生じさせ、読者の結果の受け止め方に影響を及ぼしてしまうこともあります。

これを阻止すべく、研究結果の公平な提示に影響を及ぼす可能性のある、研究テーマと著者および貢献した研究者の間のあらゆる利害関係を開示する必要があります。特定の学会への所属、企業や非政府組織の役員、その他の追加的な役職などに従事している場合には、その情報を開示することも含まれています(ただし、ここに記載することに限定されるものではありません)。利益相反の可能性がある事項は、すべて論文投稿時に開示するようにします。
 

資料を引用・転載する際の著作権許諾
 

図や表など、他で発表された資料を引用・転載する場合には、著作権の確認、および必要に応じて著者・作成者の許諾をとることが必須です。著作権のあるものを使用するには、権利者の承諾を得ておくのが原則ですが、著作権の保護期間を過ぎている、あるいは著作権権利処理が済んでいることから個別に承諾をとらなくても使える場合もあるので確認しましょう。クリエイティブ・コモンズ(CCライセンス)表示がある場合には、マークの指示に従って利用します。

いずれにせよ、論文で図表や画像を引用する際には、読者が他から引用された図表であることを明確に区別することができるようにするとともに、どこから引用したのかも分かるように引用元の情報を明記する必要があります。また、人物が映り込んだ画像(写真)を利用する際には、被写体のプライバシー等への配慮も必要です。
 

カバーレター


論文を書き上げて投稿するときには、投稿先のジャーナルにカバーレター(Cover LetterまたはLetter to the Editor)を添えて提出します。カバーレターとは、編集者に自分の論文が投稿先のジャーナルに掲載するに値するものであるとアピールする添え書きです。研究の重要性を、明瞭、簡潔、かつ丁寧に伝えるものでなければなりません。一般的には、研究分野で未解決の問題、自分の研究がいかにその問題に取り組んでいるか、研究の主な結論の重要性、著者情報を提示します。加えて、利益相反がないことを示すことも必要です。

カバーレターは、論文投稿時に必要な書類であり、編集者の投稿論文に対する印象にも影響するものですので、礼儀正しい文体で書くようにしましょう。編集者に自分の論文をアピールするため、カバーレターを有効に利用してください。
 

英文校閲

 

英文校閲は、ジャーナルに原稿を投稿する前の重要なステップです。投稿原稿と資料がすべてまとまったら、著者は休憩を取って気持ちを切り替えてから、原稿に目を通すようにすることをお勧めします。

問題の一面しか見ないまま科学的な内容を書き進めていないか?
セクションとセクションの間のつながりや論旨の流れは論理的か?
内容に矛盾はないか?
 

スペルミスのない、文法的に正しい英語で文章を書くことはもちろんですが、ジャーナル編集者や査読者に研究の新規性を説得力のある議論がなされる英語論文に仕上げねばなりません。そのためには、いわゆるプルーフリーディング(簡易な英英文チェック)から一歩踏み込んだ英文校閲が必要なのです。
 

投稿する原稿と資料などがすべてまとまったら、本文と合わせてデータや図表もダブルチェックしてください。投稿時に共著者の承諾書などの提出を求められることもあるので、投稿規程の事前確認は必須です。原稿については、投稿前に同僚や研究者に原稿に目を通してもらうなど、読者の視点からのフィードバックを得て、必要な修正や加筆などを行いましょう。

 

まとめ
 

原稿を投稿する前に、必ずジャーナルのガイドラインに厳密に従っているかを確認しましょう。結果の記載方法、著者ガイドラインの遵守、文章の質と明瞭さといったことが、原稿が受理される可能性を左右します。独自の提出書類を求めるジャーナルもあるので注意しましょう。最近はオンライン投稿が主流になっており、ジャーナルや出版社によってフォームや投稿方法が異なります。ガイドラインを良く読んで、準備してください。

最後に、ここでは投稿の前に考慮すべきことをまとめましたが、投稿後も気を抜くことはできません、と書き添えておきます。アクセプトされても第一関門を突破したばかり。多数の査読コメントや大きな修正対応が求められることもあれば、追加実験が必要となることもあるでしょう。論文がジャーナルに掲載されるまで、どうかくじけず頑張ってください。
 

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