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リザ・C ニュージーランド在住。オークランド大学で修士号を取得後、医学ライター、テクニカルライター、マーケティングコーディネーター、マッセー大学の実験指導員として働く。2003年からフリーランスの校正者・編集者・プルーフリーダーに。大学院での研究を再開し、学術研究者として校正原稿の筆者の気持ちをリアルタイムで理解できる。

大学院での研究を再開し、学術研究者として校正原稿の筆者の気持ちをリアルタイムで理解できる。

校正歴9年ですが、これまでの仕事について教えてください。

大学卒業後、医学出版社のライターになりました。その間、医学と医学研究・開発に関する記事をかなりの量書いたり編集したりしました。その後、英語ネイティブでない人の論文の校正をフリーランスとして行うようになって、今に至っています。最近は、大学院に戻って分子微生物学の勉強もしています。

これまでに大学院で扱ったテーマは?

沿岸海洋環境学と養殖業、微生物の相互作用とエコシステム、応用微生物学とバイオテクノロジー、それと、資源管理についての論文を書きました。それと、ワインの微生物環境学についての解説論文も。

医学・テクニカルライティングの世界に入ったきっかけは?専門科目は何でしたか?

大学卒業後すぐに、運よく足を踏み入れられたって感じです。学生時代は英語と生物学が得意科目でしたから、この2つの学問が混ざった仕事ができるなんて、嬉しくてたまりませんでした。学問としては環境学や微生物学に注目しているのですが、仕事では医学関係が多いですね。

大学での実験指導員の仕事はどうでしたか?

大学で実験のデモをする仕事は、かなり大変でした。学生がどのような質問をしてくるのか、学生が実験でどのような行動をとるのか、事前に分かるものではありませんから。学生からの質問は、いつも自分が考えもしないような内容でしたね。でも、そのお陰で、あるコンテキストで自分が使用した方法論の裏に隠れていた理由とか、実験の限界などについて、学ぶこともできました。

校正原稿は、英語ネイティブとネイティブでない人の原稿両方を引き受けますか?ネイティブでない人の原稿を校正する際、難しいと思うことは?

筆者の母国語に関係なく引き受けます。英語ネイティブでない人の原稿を校正する際、"a"や"the"などの冠詞、"in"や"on"といった前置詞、それと、主語と動詞の関係に特に気をつけています。それと、文化の違いもよく目にします。英語の科学文章は非常にフォーマルで、堅苦しさがありますけれど、ネイティブでない人の論文に感情がこもった文章が時折見られます。例えば、同僚に感謝の意を表す箇所などで、"We wish to express our very great gratitude towards ..."と心のこもった表現を見かけますけれど、英語ネイティブは"We wish to thank‘x' for their assistance"のように、さらっと簡潔に済ませています。

専門性が高い論文の対処の仕方は?

普段より何回か多く繰り返し熟読しています。それと、別紙に論文の重要点をメモしておいて、原稿が論理的に順序だっているか、読者にとって内容が明確で、科学的に正確であるか確認する努力をしています。

校正作業の際、参考としてよく使う便利なサイトはありますか?

Googleって凄いですよね!それと、校正原稿のトピックの周辺知識を深めるために、ScopusとかBiological Abstractsなどの大学のデータベースもよく利用させてもらっています。

コピー・エディティングとサブスタンティブ・エディティングをどのように定義して、差別化していますか?

サブスタンティブ・エディティングでは、論文の「科学」に一層注目して校正しています。コピー・エディティングのように語学だけに焦点を当てるのではなく。

サブスタンティブ・エディティングでは、原稿が論理的にまとまっていて、使われている方法論が適切で一般的に容認されているものかも確かめます。もちろん、すべてのトピックのエキスパートである校正者なんていませんから、ジャーナルの査読者のように原稿を読めるわけではありませんけれど、語学だけではなく「科学」のエラーもチェックするので筆者の役に立つと思います。

自分で好きに選べるなら、どのような原稿を校正したいですか?理由も教えてください。

病気に関する原稿がいいですね。特に癌とか免疫学の。それと、食物や植物に関する微生物学の原稿も。過去の仕事と現在の大学院での研究の関連分野ですから。

医学の分野で、同分野を専門としている校正者の起用の重要性について教えてください。

医学という学問は、幅が広くて奥が深いですから、医学すべての専門家にはなれません。ですから、医学校正者は自分の専門を1つか2つの科目に絞ることが重要だと思います。病因論や多くの病気に潜んでいるメカニズムについての知識は日々深まっていますし、医学の技術の進歩も急速です。論文中の方法論が研究に対して適切であるか判断するには、技術について詳しいだけでなく、その技術の周辺情報も熟知している必要があります。医学界で「当たり前」とされている知識をじゅうぶん備えていないと、原稿の隅々まできちんと校正するのは無理です。

医学では校正とライティングは別物だと聞きましたが、その違いとは?どちらか一つを身に付けると他方もやりやすくなるのでしょうか?

多くの点で、この2つの違いは、コピー・エディティングとサブスタンティブ・エディティングの違いと同じだと思います。しっかりと校正するには、論文の内容の意味だけでなく、同分野の論文との関連性も把握できる程度の、専門知識を有していることがとても大事です。この専門知識がないと、例えば、論文中の結果が使用された方法論に見合っているか判断できません。それに対してライティングでは、それほど深い専門知識や経験は必要ありません。でも、この校正とライティングのスキルは、お互いの役に立つものです。医学ライターは専門知識が深まると校正の仕事もできるようになりますし、ライターとして身に付けた基礎的なスキルは校正作業で活かせます。

ご自身の論文執筆のプロセスを教えてください。

ほとんど直感的なプロセスですよ。私の場合、混沌としたものを順序立てる作業とでも言えばいいのでしょうか。大抵、あるトピックに興味を抱くようになって、そのトピック関連の文献を読みます。たくさん読みます。トピックに興味を無くさなければね。1つのトピックに興味を持って、それに関する知識も十分得たら、研究の計画を立てます。研究に必要なものや予算の確認をして、スケジュールを組んで、研究をはじめて、結果を分析して、そして論文執筆に取りかかります。

論文執筆の最初のステップは、ノート、研究論文、データなど、関連情報の収集ですね。その次は、その情報を論文のどの部分に取り入れるかを決める作業。Introduction、Results、Discussionなどのカテゴリーのことです。この作業は各情報のキーワードやポイントをカードに記しておいて、それぞれのカードをカテゴリーごとにまとめます。全情報をカテゴリー別にまとめたら、それぞれを順序よくアレンジして、第1草稿の執筆を開始します。

執筆ではまず、カードに記したキーワードや箇条書きのポイントを文章にします。ここで大事なのは、1つの事柄を1つの段落にまとめることです。各要点は段落のはじめに書くべきです。それと、もう1つ大事なのは、論文全体が学問分野への貢献を示そうとしている1つの論点だということです。一通り書きあがったら、仕上げて投稿する前に誰かに論文を読んでもらいます。

インパクトファクターの高いジャーナルの論文に共通していることは?

そのようなタイプの論文は、新しい問いを投げかけているか、既存の問いに新しい方法で答えを出しているようですね。

最後に、初めて論文執筆に挑戦する日本人研究者にアドバイスをお願いします。日本人ならではの英作文やミスはありますか?

一番大切なのは、論文中の「科学」が適切であることだと思います。それと、論文に適したジャーナルの掲載を目指すのも大切だと思います。だから、何冊もジャーナルを読み比べて、どのタイプの論文が掲載されているかだけでなく、各ジャーナルの論文のライティングスタイルも知っておくといいでしょうね。

日本人研究者は、他国の英語ネイティブでない研究者と同じようなミスをしていますよ。冠詞や前置詞などの誤用が目立ちます。それと、LとRの混同も見られます。例えば、“proliferate”を“proriferate”とつづり間違えたり。でも、日本人の英作文のレベルはかなり高いです。ネイティブレベルではありませんけれど、何を言おうとしているのかちゃんと分かります。私の日本語なんか、比べ物になりません!

本人の希望により、本名を伏せ、エディターネームを使っています。

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