論文の考察(Discussion)セクションの書き方

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考察は論文の中で最も重要な部分で、結果(Results)のセクションでデータを提示した後に書かれます。この記事では、論文の考察をどう構成すべきか、そして、どのような内容を書くべきかを解説します。

論文の考察(Discussion)とは?

論文の考察では、研究課題・リサーチクエスチョンと文献レビューに基づき、結果の説明と解釈を行い、それが意味するところを論じ、その限界を認め、提言を行います。これうした論証により結論を導き出すのです。

 

論文の考察に含むべき内容

  • 主要な発見のまとめ

This analysis does not support the theory that…

  • 論文のリサーチクエスチョンへの答え

These findings confirm our hypothesis that…

  • 発見についての解釈

Our findings agree with the theory proposed by Jones (2019)…

  • 発見の意味

The data provide new evidence of…

  • 研究の限界(=結果からは分からないことなど)

This study only included individuals living in urban areas, and the results may not be generalizable to populations in rural areas…

  • 研究成果の実用化の提案

X should be taken into consideration when

  • さらなる科学的調査の提言

Further studies are necessary to…

考察セクションで書くべきでないこと

  • 結果すべての再提示
  • 結果のセクションで示していない結果
  • データによる裏付けのない推測
  • リサーチクエスチョンや仮説に直接関係しない結果
  • 図表(図表は通常 結果のセクションに記載します)

論文の他の項目とどう重なるのか?

論文の考察の内容には、一部、結果のセクションと重なる内容が含まれます。結果で示されたデータについて、考察で解釈するからです。研究の種類(定量的か定質的か)によって、考察の構成は異なります。人文・社会科学(HSS)領域のような定質的研究では、考察と結果のセクションは分かれていないことが多く、科学分野などの定量的研究の論文では、これらのセクションは別々に書かれるのが一般的です。

考察ではデータの詳細な分析と解釈を行い、結論では考察で得られた結果のまとめを行います。研究分野によっては、考察と結論のセクションは1つにまとめられます。構成について迷った場合は、指導教官とも相談し、所属学術機関の要件を確認しましょう。

考察の書き方

考察は、論文の中で最も重要で、おそらく執筆も最も難しいセクションでしょう。結果の解釈から始め、研究分野の一般的文脈における研究結果の位置づけを示します。またこのセクションは、批判的な考察や、結果に基づいた問題への革新的解決策の着想、リサーチクエスチョンをより深く理解する能力などを証明する場でもあります。

論文の考察を一度に書くのは大変ですから、以下の手順でまず下書きを作成します。:

  1. 自分の主張と、結果がそれをどう裏付けるかを示すアウトラインを作成する
  2. 研究結果がそのアウトラインにどう当てはまるかを示すことで議論を強化する
  3. 予想外の結果や議論の余地のある結果については、その背景や要因を説明する
  4. 研究結果を踏まえ、再び文献レビューを行って、より詳しく調べるべき先行研究を探る
  5. 研究の限界を明らかにする
  6. 研究結果の重要性と、その結果が示すことを簡潔にまとめる
  7. 研究結果の実用についての提案を行う
  8. 研究結果や、研究の限界に基づいた今後の研究を提案する

下書きが出来上がったところで、執筆にとりかかります。以下のステップを参考にしてください。:

  1. まず、序論(Introduction)で述べた論文課題/リサーチクエスチョンと仮説を再度提示する
  2. それに対する答えの根拠となる研究結果を示す
  3. 相関する他の研究結果について言及し、自分の答えの正当性を証明する
  4. 研究結果と既存の研究との整合性を説明し、その分野の知識のギャップを自分の研究がどう埋めるかに言及する
  5. 自分の発見と矛盾する先行研究を挙げ、矛盾の要因と思われる原因(母集団のサイズ、選択基準・除外基準、データ収集・分析方法の違いなど)を説明する
  6. 予期せぬ発見についてはすべて記述する。起きたことを説明し、考えられる原因(回答率の偏り、サンプリングの偏り、使用機器の変更など)について考察する。サンプリング方法の不備や、不適切な研究方法が原因である可能性もあるため、研究アプローチの正当性については十分に確認する。場合によっては、仮説の立て直しや、序文の書き直しも行う
  7. 研究の限界や弱点をすべて挙げ、それらが研究結果の解釈や妥当性にどのような影響を与えたについて記述する。研究で浮かび上がった限界の種類によっては、さらに研究すべき領域が明らかになることもある
  8. 研究結果の実用、理論的な意味合いについてまとめる
  9. 今後の研究の可能性のある分野を提案する

結果はどのように解釈すべきか

論文の考察セクションでは、結果を簡潔に解釈しその重要性を説明します。そのために、以下のような方法を用います。:

  • データの関係パターン相関を割り出す
  • 結果が仮説を裏付けているかについて考察する
  • 想定していた説明の正しさの証明を試みながら、その説明だけに拘泥しない
  • 新しい発見について強調し、それが知識のギャップをどう埋めるかを説明する
  • 予想外の結果について説明し、その重要性を判断する

研究結果の意味について、どう考察すべきか

論文の考察のセクションでは、研究結果が、先行研究にどう関わり、どう貢献するかを説明します。論文の文献レビューのセクションとも通じるものです。次のような問いに答えられるようにしましょう。:

  • その研究は、他の研究によって裏書されるものか?それは、新たな知見もたらす、あるいはリサーチギャップを埋めるものか
  • 研究結果は、他の研究結果と異なるものか?そうであれば、その理由を明示する
  • 研究結果は、既存の理論に反するものか、それと既存の理論を支持するものか
  • 実用化につながる研究結果であるか?

研究の限界をどのように説明すべきか?

すべての研究には一定の限界が存在します。しかし研究の限界を論じることで、発見の意義を卑下してはいけません。限界についてきちんと説明し、研究の信頼性が高めることが必要です。

研究の限界の例:サンプルサイズ、データ収集や分析に用いた方法の違い、研究のタイプ(例:レトロスペクティブとプロスペクティブ)、個体群の選択/除外基準、交絡因子の影響、研究者のバイアス、データ収集方法の頑健性など。

今後の研究についての提言はどうすべきか?

提言は、論文の考察もしくは結論のセクションのいずれか一方に記述します。提言とは、例えば以下のようなものです。:

  • 研究に関連する未解決の疑問点の解決
  • 具体的なアイデアを用いた、研究の進展
  • 研究の限界に基づいた今後の研究

例:「この発見が一般化できるか確認するため、サンプルサイズを大きくした研究が推奨される」

例:「5年後に再インタビューを行い、このトラウマ的経験への認識がどう変化したかを調べることを提案する。」

論文の考察セクションを書くためのヒント

  • 小見出しを使って考察を細分化することでポイントをわかりやすくする
  • 序論と文献レビューのセクションとの一貫性を保つ。同じ視点、トーン、用語を使用する
  • 簡潔に記述する
  • 論理的に記述する。予期せぬ、あるいは新規の発見がない限り、結果と同じ順序で考察を述べる
  • 通語は使わず、すべての専門用語と略語・頭字語を定義する
  • すべての出典を明確にする。引用文献の大半は直近10年以内に出版されたものであることが望ましい
  • 剽窃を避ける

 

よくあるご質問

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