マデリン・K アメリカ出身。ノースイースタン大学で科学・技術コミュニケーションの学士号、マサチューセッツ大学で公衆衛生の修士号を取得。これまでに、眼科の教科書の編集、医学学会の会議のサポート、数々の健康経済学の研究のデザインや実行に携わる。社会医学、免疫学、産科学、婦人科学、内科など、幅広い分野を扱える医学論文の校正者として活躍中。
校正が得意だったので、校正者として働く決意をしました。昔からずっと読み書きが好きでしたし、技術・科学コミュニケーションの学位を取得しましたし。校正は楽しくて仕方ないくらいです。
プロセスがまったく違います。ライティング作業では、書くべき内容に集中しますが、校正作業では、内容だけでなく、文章の構造や文法、句読法などにも同時に注目しなくてはなりません。なので、スキルが少々異なります。でも、校正者に必要な、言語構造の理解のスキルは、ライティングの仕事にも役立ちます。同様に、ライターに必要な、論文を組み立てて文章の流れを作るスキルは、校正の仕事にも役立ちます。
校正者の助けが必要ない人は、いないと思います。私の場合は、必要だと感じたときに自分が書いたものを校正します。でも、第三者に校正をお任せするほうがいいです。何時間もかけて完成させた自作の文から、エラーを見つけ出すのは難しいですし。
ライティングの授業がたくさんあり、技術マニュアルの書き方などを習いました。例えば、ビデオレコーダーとかソフトウェアのマニュアルなど。それと、医学ライティング、医学用語、技術校正、それに企画書の作成に関する授業もありました。ウェブサイトのライティングのコースも受講しました。書籍のライティングとはまったく違うものでした。対象読者も文のスタイルも違いますし。そのほかには言語学のコースや、作文の集中コース、レトリックの授業もありました。どのコースも、言語の一般的な構造についての理解に役立ちました。
医学とヘルスケアの知識は、10年以上の仕事の経験の積み重ねです。大規模な病院にも何回か勤務しました。また、ケア団体、ヘルスケア管理のコンサルティング会社、臨床研究期間でもマネージメントの仕事をしました。そこで働いていたときに、ほとんど全部と言ってもいいほどたくさんの医療科目に接する機会があり、仕事のために、それぞれの内容に気を留めておく必要がありました。不慣れな用語があった場合は、もちろん調べます。たくさんの資料や医学百科事典にアクセスできるようにしています。それと、インターネットでジャーナルの論文も検索します。
はい。まず初めに、原稿を受け取った直後、投稿予定のジャーナルの投稿規程に目を通して、原稿のフォーマットの調整を行います。これは、原稿の内容を熟読する前です。次に、内容の校正作業に入ります。行ごと、段落ごとに区切って校正をすることが多いです。この作業のあと、見落とした箇所がないかどうか、論文は読みやすく、内容がうまく流れているか確認するために、もう一回原稿の初めから目を通します。合計3回原稿を読むことになります。
第2または第3言語での執筆は、非常に難しいでしょうね。できる人がうらやましいです。日本語と学術英語の違いが原因で起こるエラーは、かなり沢山あります。例えば、英語の冠詞(a、an、the)の使用法。日本語には冠詞の概念がありませんから、正しい使用法を身に付けるのは大変だと思います。私からのアドバイスは、いつも校正を第三者に頼むことです。自分で書いた原稿を校正するのは大変難しいですから。それと、声を出して原稿を読むこと。文章を目で追ってるだけでは普段見逃してしまうエラーが、はっきり浮きでてきます。また、校正と再読の間、数時間原稿を寝かしておいて、頭をリフレッシュさせることも大事です。
ほとんどコンピュータです。もう慣れましたから。これは、校正者次第でしょうね。紙原稿での校正に慣れてしまって、コンピュータでの校正は苦手な人もいるようですけれど。私の場合は、MSワードの変更履歴機能を使って、効率的に作業をしています。紙上の校正を、あとでコンピュータに打ち込むのは時間の無駄ですから。ものすごく複雑な校正の場合は、まずスクリーン上で校正をし、校正原稿をプリントアウトして、紙の原稿に目を通しています。スクリーン上で2度校正をしたあとでも、プリントアウトして読むと、なぜかいつもエラーを発見しています。だから、「完璧な校正なんて存在しない」と自分に言い聞かせて、努力しています。
一番気をつけているのは、原稿内容の明確性や理解のしやすさです。読者が内容を理解しやすいように書かれていることが大事ですから。読者を第一に考えて校正するのが一番です。
例えば、血圧や血中の酸素濃度などの臨床数値のリストのあとに、それぞれのパラメータの評価リストが続くことがよくあります。リストが2つあるせいで、関連数値が原稿内で離れ離れになり、数値の相互性の理解が難しくなってしまいます。このような場合は、数値を対応するパラメータに近い場所へ移動させます
コピーエディティングは、文章の流れの明確さやシンタックスを改善する校正ではなく、語法を正す校正です。一般的に、コピーエディティングでは、違う語に置き換えたり、文を書き直したりはしません。ただ、句読法や冠詞の用法をチェックするだけです。
それに対して、サブスタンティブエディティングでは、コピーエディティングの校正内容に加え、文章やパラグラフを並べ替えたりして、原稿全体の流れの改善もされます。例えば、表で述べられた事柄が、後にテキスト内で繰り返されている際、余分な部分を削ったり、書き直しをします。
いいえ。いつも必要だとは限りません。この種の校正では、明確な文章にするための改善点がないか注意を払い、時には原稿の部分的な並べ替えが必要です。でも、並べ替えが必要なほどのサブスタンティブエディティングが必要な原稿は、4稿中1稿程度です。ほとんどのケースは、句読法などを整える程度です。
依頼原稿についてのリサーチをいつも試みています。それと、疲れているときに校正作業を行なわないことです。1日中休む暇もなく働いた直後、校正を始めたりはしません。また、邪魔をされずに1時間半続けて働ける環境が必要です。依頼原稿を読んで内容をじゅうぶん把握するのに、1時間半ほどかかるからです。なので、仕事を始めて10分後に、何かほかの事に気をとられ、校正作業を中断するのは極力避けたいです。
それと、自分の校正能力の向上や新しいことを学ぶことに、いつも積極的な姿勢でいるようにしています。依頼原稿の専門分野があまり馴染みのないものだったら、その分野のほかの論文をまず読み、専門用語などをしっかり把握してから、依頼原稿に取り組みます。
重要です。その分野に興味があれば、内容の詳細を理解しやすくなると思います。例えば、私が銀行関係の文書の校正をするとなったら、興味のない分野なので、内容を深く読めないと思います。私の場合、科学の原稿ならどの分野でも積極的に取り組めます。海洋学とか、物理学でも。つまり、自分が校正に熱心になれることが大事だと思っています。自分が校正をしている科学論文が、これまで何百年もかけて作りあげられた人類の努力の結晶だと考えると、ものすごくやる気が出てきます。
医学以外の科学について、かなり読みました。昨年の夏、海洋学の調査船に乗って仕事をしました。だから、海洋学にはそれなりに馴染みがあります。この学問は物理学や、生物学、化学もカバーしていますし。それに、学生時代にハードサイエンス(物理学、科学、生物学、地質学、天文学など)の授業も受けました。でも、もちろんそのような分野の学術文書をきちんと校正するには、もっと深く勉強する必要がありますけれど。校正者の作業目標が同じなように、結局どのアサイメントも校正における必要事項は同じです。
Editorial Freelancers Associationのお陰でフリーランスの仕事を得られるようになりました。この団体のオンラインデータベースで、著者が校正者に連絡が取れます。特に、医学文書を専門にしている校正者はそれほど多くないし、この団体の中で、医学校正者として正式に認められるのは難しいので、この団体の医学校正者なら信頼できると評判があります。また、American Medical Writers Association(AMWA)にも加入しています。この団体は毎年ワークショップを開いていて、ライティングや校正のスキルを磨くのに最適です。毎月発行されるジャーナルでは、医学ライティングのことがカバーされていますし、校正者にとって興味深い記事もあります。
ワークショップにも何種類かあって、例えば、句読法や文の明確性についてのコースに参加したことがあります。あとは、医学文書の検索、健康・フィットネスのライティングについても。あとは、微生物学などの科学について知識を深めるワークショップもありました。
また、CD-ROMをベースにしたAMWAの文法ウェブサイトワークショップもあります。Grammar I、Grammar IIと呼ばれているもので、とても良かったです。ミニテストやAMWAに送付する最終試験などがありました。
あとは、表やグラフ、ポスターの製作、パラグラフについてワークショップにも出席しました。
締め切りが翌日というアサイメントでも、普段は時間はじゅうぶんあります。どんなに作業時間が短くても、大事な点はすべて押さえるべきです。なので、まずはスペルやタイピングのエラーがないかチェックします。普通のタイプエラーだけでなく、例えば”too” であるべき箇所が”two”や”to”になっていないか。Judith Tarutz が書いたTechnical Editing: The Practical Guide for Editors and Writersには、作業時間が短い校正に関するガイドラインが書かれているので、よく参考にしています。
まあ、それは原稿しだいです。それほど校正が必要でない場合は、短い作業時間でも大丈夫です。サブスタンティブエディティングが必要な場合は、締め切りまでにきちんと仕上がるよう、校正以外のことは放っておいて作業に専念します。
使いませんけれど、繰り返し作業が多い場合、自分のマクロを書いて作業時間の短縮を図ります。校正者はさまざまな ショートカットを使っています。私は、キーボードのショートカットについて詳しいです。
読者の読み方が違うことを意識します。インターネットでは、誰もまとまった文章を熟読しません。どちらかというと、ざっと目を通すだけです。なので、ウェブサイト用の文書を書く場合は、簡潔にまとめて、読みやすいフォーマッティングを心がけています。
山や森でハイキングをするのが大好きです。それと、ガーデニングも得意で、花や野菜を育てています。旅行も好きです。
だから、時間があれば、あちらこちらに出かけています。今はフルタイムで働いていて、フリーランスですし、パートで学校にも通っているので、自由時間はあまりないですけれど。音楽会社の理事もしているし、ガーデニングクラブにも入っています。
それは、非利益団体のボランティア活動です。政府や他の非営利団体が支給する助成金の申請書を書くお手伝いをしました。このような書類の作成は、他の文書のライティングと似ています。読み手を念頭に、明確で正確な表現を心がけて書くことが大事です。もちろん、医学論文のような専門性はありませんけれど。
出版関係のボランティア活動もしました。メディアとのコミュニケーションのために、プレスリリースなどの文書を書きました。目的がはっきりしていて公平な立場で書く医学ライティングとはまったく異なるもので、読み手を説得できるように書かなければなりません。
本人の希望により、本名を伏せ、エディターネームを使っています。