【専門分野】 経済・金融・ITなど

英文添削・英文論文 改善

ジェフリー・B・ハート 氏 イギリス出身。1976年、ドイツのフライブルグ大学でドイツ語を修了。1981年にイギリスの名門サセックス大学で国際政治学を学ぶ。大学卒業後、すぐに英文校正のキャリアをスタートさせ、マーケットレポートや経済年鑑の英文校正に携わるなど、一貫して経済・金融・IT分野の実務畑を歩く。2001年よりマンチェスター大学情報科学部のR・ネヴィル博士の研究に参加。博士の研究を英文校正者の立場からサポートしている。

英文校正とは“眠っている”英文を揺り起こす作業

マンチェスター大学で華々しい成果を挙げていらっしゃるそうですね。

ええ、私は今、マンチェスター大学の情報科学部の教授のR・ネヴィル博士と一緒に仕事をしています。彼は有名な科学者で、ラブメトリックス技術を使った企業向けのソフトウェアを開発しています。その研究は世界でただ一人、ネヴィル博士しかできないものです。私の役割は、英語をブラッシュアップし、彼の研究成果を世界の人々にわかりやすく発信すること。この研究は今、イギリス政府の援助を受けており、世界最先端の研究として評価されています。イギリス屈指の名門大学で世界レベルの研究者と一緒に仕事ができるということは、とても幸せなことです。

ネヴィル博士の母国語は英語でしょうから、英文校正も必要ないように思われますが?具体的に英文校正の作業はどのように行うのですか?

必要ないとは言い切れません。博士の文章の場合、私はまず1回目のリーディングで英文法を点検します。句読点の位置が正しいか、大文字・小文字の使い方などの英語スタイルは一貫しているかどうか。2回目は、文章の意味に気を配りながら読み進めます。英語表現が洗練されていないために意味がぼんやりし、英文が“眠っている”場合がありますから、それを揺り起こして、人々の心に届く英語に書き直します。最後に、すべての英文を自分に読み聞かせるようにして読み、どこか流れの悪いところはないか、一度読んだだけで理解できる文章かどうかを判断します。

英語のネイティブスピーカーではない執筆者の原稿も読みますか?

英語を母国語としない執筆者からの依頼も多いですよ。彼らに多い間違いが、単数形と複数形の混同です。単純に複数形sを付け忘れるという例ですね。これまでに何万回も見てきました。英語ノンネイティブの執筆者の文章には、理解に苦しむハードなものもありますが、私の英文校正の哲学として、自分の好みで英文を自由に書き換えることはしません。 私にできるのは、執筆者の仕事に敬意を払い、彼らの意思が論文の中で生きるよう、改善するだけです。

ずっと金融・経済・IT畑を歩まれてきたジェフリーさんですが、これまでに専門外の原稿を校正した経験はありますか?

はい、もちろん。「プロの英文校正者だから」という理由で、さまざまな分野の原稿を頼まれますが、どんな原稿でも自由自在に英文校正できるわけではありません。自分がその原稿に適した校正者であるかどうかを事前にじっくり見極めなければならないと感じる出来事に何度も遭遇しています。

具体例があれば聞かせてもらえますか?

具体例といえば・・・そう、料理のレシピ集を校正してほしいという依頼がありました。私は仕事を開始してすぐ「これはやっかいそうだな」と直感しました。というのも、料理道具や食材の名前がたくさん出てくるので、インターネットや百科事典などの検索ツールを使って、逐一それらを調べる必要が出てきたのです。で、それがアフリカ料理のレシピ集であるということを、検索し始めてから知りました(笑)!

(笑)アフリカ料理って、なかなかイメージがわきませんね。

そうでしょう?私もアフリカ料理は見たこともないし、どこを探しても情報がないのです。私は通常、クライアントから納品後に感想を聞いていて、幸いその依頼主は私の仕事を気に入ってくれましたが、自分の専門外の仕事は避けたいものです。背景知識がなければ、プロフェッショナルな仕事は望めないと私は考えています。

確かに、校正者と原稿のミスマッチの問題については、多くの英文校正会社が細心の注意を払うところです。今「プロ」という言葉が出てきましたが、では、英文校正者はどこまで極めれば「プロフェッショナル」といえるようになるのでしょうか?

私は25年間英文校正の仕事に携わっていますが、英文校正者にプロと呼べるときが来ることはない気がします。いつも成長の途上にいるのが校正者です。言語という領域は途方もなく巨大で、学ぶことが多すぎます。実際、私もネヴィル教授の仕事に関わったことをきっかけにして、経験25年目にして英文校正連盟の上級メンバーに認定され、そのおかげでクライアントも増えて、オックスフォード大学などからも定期的な依頼を受けるようになりました。18世紀に出版された本の英文校をお願いしたいというユニークな依頼もあったんですよ。私自身も常に変化し、成長しています。このように、一生、成長の途上にいるのが校正者なのだと思います。

本人の希望により、本名を伏せ、エディターネームを使っています。