藤枝繁先生へのインタビュー - Share Your Story

海洋ごみは全ての人が当事者であり、人々が自分の問題だと感じ、自分たちで解決しようという動きがない限り、教育や研究活動をしても解決はしない。

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藤枝 繁(ふじえだしげる) 教授

鹿児島大学 南九州・南西諸島域イノベーションセンター センター長

藤枝繁先生へのインタビュー - Share Your Story

[取材・編集] 研究支援エナゴ

最近、海洋プラスチックごみ問題が注目を集めていますが、藤枝先生は1990年代から海洋ごみの問題を研究されてきました。1997年、ナホトカ号から流出した重油の回収にボランティアとして参加した際、京丹後の海岸でプラスチックごみの問題に出会い、それ以来、世界各地でプラスチックを含む漂着物に関わってきました。

今回は藤枝先生に、本格的に海洋ごみの問題に取り組むようになった経緯、海岸で回収した100円ライターに印刷されたお店の住所から海の流れを調査する「ライタープロジェクト」、海洋ごみを減らすために必要なこと、海岸や海中で破片化するマイクロプラスチックの問題についてお話を伺いました。また2001年に創設された漂着物学会の概要とその活動についてもお伺いしました。

現在、藤枝先生は、鹿児島大学の「南九州・南西諸島域イノベーションセンター」のセンター長として、研究者と産業を結びつけ、地域課題の解決に取り組まれています。産学官の連携において何が行われているのかについてもお話しいただきました。

海洋ごみ研究を始めたきっかけ

1997年のナホトカ号の事件1の後、私は学生たちと一緒に漂着した重油を回収するボランティア活動のため、京都府の京丹後の海岸に行きました。

私たちの重油回収ボランティアは2月から始まりましたが、3月末に地元の方から「もうここは十分だから、君たちは鹿児島に帰りなさい」と言われました。まだ春休み中の私たちは「もう少し頑張ります」と答えたのですが、地元の方は続けて、「プラスチックごみがたくさん流れ着いているのに気づいたでしょう。それらは多くが台湾や中国、韓国など君たちの住んでいる鹿児島を通ってここまで流れて来ている。早く鹿児島に帰って、鹿児島の海岸でそれらを回収してください。それが丹後の海をきれいにすることにつながります。」とおっしゃられました。 

確かに、地元の方からは、「重油だけではなく、さまざまなプラスチックがたくさん流れ着いており、油とプラスチックが混ざると処理が非常に手間」という話を聞いていました。また海はつながっており、遠くに行かなくても自分たちの目の前の海をきれいにすることが全体の海をきれいにする第一歩だということが伝わってきました。それを受けて、私たちは鹿児島で海ごみ問題を解決するために、学生たちとともに海岸清掃ボランティア活動を始めました。

翌年、薩摩半島の西海岸に大量のごみが漂着する事件が発生しました。私たちが清掃活動を行っている際、テレビ局の人が来て「このごみはいつ漂着したのですか?」「どこから流れてきたのですか?」「毎年こんなことがあるのですか?」と次々に質問されました。しかし私たちは過去のデータを持っておらず、全く答えられませんでした。

そこで、「普段から調査をしておく必要がある」と考え、海ごみを回収するだけでなく、調査活動も始めることにしました。これが海ごみ研究のきっかけです。最初はボランティア活動の一環としての調査でしたが、いつの間にか海ごみ研究に深く関わるようになりました。

海岸に流れ着くごみは厄介者ですが、その中には興味深いものもあります。私は、異世界からやって来るウルトラマンを探しています。海岸には、ウルトラマン大図鑑には載っていない、新種のウルトラマンが異国からやって来るのです。このように漂着物には、毎回何か新しい発見があるかもしれないというワクワク感があります。環境問題研究者として少し不謹慎かもしれませんが、これが海ごみ研究の醍醐味でもあります。

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大学での研究から民間へ

私は23歳から大学で働き始め、それからすでに20年以上大学で研究教育に携わって来ました。

この間、海岸漂着物処理推進法2の制定にも関与し、海洋ごみの国の専門委員を務めることもありました。また、与那国島から知床岬までの国内、また台湾、中国、韓国、ロシアなどの東アジアの国々だけではなく、震災漂流物に関する調査ではアメリカ西海岸やハワイ、ミッドウェーなど、北太平洋各地の海岸を歩きました。

私の海洋ごみの研究の目的は、原因の追求や人体への影響ではなく、この環境問題を解決することです。研究を重ねれば重ねるほど、論文や教育では社会を変えることが難しいと感じるようになりました。

海のごみの問題は、すべての人々の一つ一つの行動が原因です。これは過去の一企業が起源となった環境問題とは別の問題です。多くの人々が日常のごみを自分事として考えていないのが原因です。陸に住む人にとって海ごみ問題は「海で働く人々や海外から流れてくる問題」という認識が強く、私が講演会でお話しても「藤枝さん、素晴らしい活動です。今後も頑張ってください」と応援されるだけで、自分たちの行動を改めようという意識はなかなか感じられませんでした。

なぜ海ごみ問題を自分事として考えられないのか。その理由が知りたくて、私は研究から離れ、民間企業の営業マンに転身することにしました。研究者ではない普通の人の視点から、どれだけ海ごみ問題に関わることが難しいのかを感じてみたいと考えたのです。また多くの研究者が海ごみ研究に参入されるようになり、私の体力勝負でアナログな研究も時代遅れとなったことも原因の一つです。

瀬戸内海のごみ問題を研究して見えたこと

現在の海洋ごみの研究がどの程度進んでいるかは把握しきれていませんが、私が行いました2008年の瀬戸内海での総合調査3の結果、瀬戸内海全体の海洋ごみの量は、日本の人口の約3分の1にあたる瀬戸内海流域住民が1人あたり1日0.3グラムのごみを海に出した場合に相当することがわかりました。

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出典:Marine Pollution Bulletin Vol. 172, November 2021
 「Standing stock and mass balance of marine litter in the Seto Inland Sea, Japan」
 DOI: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0025326X21009577?via%3Dihub

 

この量は、ペットボトルで換算すると年間2本分ほどです。意図的ではないとしても、この程度の量のごみを環境中で失ったことはないでしょうか。それらが集まると今の瀬戸内海のごみの量になります。

また海を漂うごみは、波によって砂浜に次々と打ち寄せられます。砂浜は海のフィルターの役割を果たしているのです。よって漂着後、そのごみが海岸に放置されるとその場にどんどんごみが溜まっていき、海にはたくさんのごみがあるように見えてしまいます。

ただし、おそらくこのごみを集めても皆さんの住む街にあるごみステーションに集まる可燃ごみ量1回分と同じぐらいです。私たちは可燃ごみだけでも週に2回、ステーション一杯分の量のごみを出していますので、海に流出するごみの量はかなり少ないと言えます。そのため、この毎日0.3グラムという量を半減させるということは、大量に出しているものを半減するよりも難しいと言えるでしょう。

さらに、海のごみは漂着・漂流を繰り返しながら広域に漂流していきます。そのため、目の前の海岸をきれいにしても、他の場所に漂着していたものが流れ出し、漂着します。商業的なビーチを常にきれいに保つことは素晴らしいことですが、人が立ち入らない場所に堆積するごみを無視しては、いつまでも漂着が続きます。海洋におけるごみ量を効果的に削減するためには、高密に集積する場所で一気に回収することで海全体での密度を下げ、流出や再漂着を減らすことが重要です。

また海のフィルターとなる砂浜は、人口の少ない地方に多く、地方の人々にのみ負担がかかります。このような不公平感を解消するため、行政枠を超えた回収への参加が必要です。

加えて、陸上のごみ問題が解決されていない限り、今後も海にごみは出続けます。よって陸域、海域とも持続的な対策に取り組む覚悟を持ち、広域的に継続的な活動を推進することが必要です。

海洋プラスチックごみを取り巻くこの30年の状況

一般社団法人JEAN4がまとめた調査結果によると、1990年代に海岸で最も多く見られたごみはタバコのフィルターでした。しかし、2000年代に入ると健康増進法の制定、増税による価格の高騰、喫煙場所の制限、マナー向上キャンペーンの成果もあり、タバコのフィルターは順位を下げ、硬化プラスチックの破片がワースト1になるようになりました。現在もこの傾向は続いています。

また、1996年に容器包装リサイクル法の成立に伴い、業界の自主規制が解除された小型のペットボトルもその後順位を上げており、90年代には上位20位にも入らなかったのが、現在ではトップ5に入るほどの主要な漂着物になりました。

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出典:https://www.jean.jp/activity/result.html
(図5 総合ワースト10品目の1990年から2018年までの29年間の推移 より)

 

一方で、減少しているものもあります。たとえば、飲料缶の蓋として使われていたプルタブは、1990年に外れないタイプのステイオンタブに変更されたため、現在ほとんど見つけることができません。今見つけた場合、30年以上前のものになるため、珍しい「お宝」となっています。

以上のことから、根本的な対策を講じればごみは減らすことができ、逆にあとでしっかり回収しますという対策は不十分と言えます。

他にも、1990年代にはトップ5に入っていました花火は、最近は順位を大きく下げています。これは、花火禁止の海岸の増加や、花火自体が文化的にあまり流行らなくなったためです。このように、社会の変化に伴い漂着物も変わります。ただし、漂着量は増加傾向にあるのではなく、例えば、1998年の揚子江の大洪水や、2013年の台風による福建省での洪水の後の大量漂着のように季節変動をしながら洪水等が発生した後に大量漂着が発生するという印象です。

それから、海洋プラスチックごみが社会的に注目を集め、潮目が変わったのは、ウミガメの鼻からストローが出たという衝撃的なニュースが出た2015年です。このことから、研究よりもニュースの方が世の中を変える力があると感じ、自分自身も驚きました。

また「マイクロプラスチック」も近年話題となっているワードです。「マイクロプラスチック」という言葉は、イギリスのリチャード・トンプソン教授5が2004年の研究6で提唱したものです。海洋ごみのうち、特にプラスチックは、海岸に漂着したまま放置しておくと、紫外線によって劣化し、マイクロプラスチック化します。私たちは、この言葉が生まれる以前から微細化したプラスチック破片に関する研究を行っており、「微小プラスチック破片」と称していました。2000年代初頭には、私たちはプラスチックがどんどん破片化していくことに警鐘を鳴らしていましたが、残念ながら私たちの声は広く届きませんでした。

社会問題化した時にはすでに遅く、現在は多くのマイクロプラスチックが世界を漂っています。海洋中に広く漂うマイクロプラスチックは回収することが困難です。マイクロ化する前にできるだけ回収することが重要です。

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また、最近では海洋プラスチックごみ問題が社会的に認知され、ごみマナーも良くなっているかもしれませんが、街中のごみステーションに出されたごみを鳥などが突き、散乱したものが側溝に流れ、川を通じて海に流れ出るという故意ではない流出があることを政府も認識するようになりました。よって使ったものを適切に処分していても海ごみは発生することから、日常生活で不要なものを買わないように心掛けることが重要です。

さらにごみ問題に関する教育も盛んに行われるようになりました。

しかし教育を受けても、実際に行動に移せない人も多いのが現実です。知識があるだけでは問題は解決しません。皆が自分の問題として捉え、自分自身で解決しようとする意識を持ち、行動しなければ、教育活動を行っても効果は得られません。

以上より、これらの小さな課題を一つずつ解決しない限り、海ごみの問題は解決が難しいでしょう。

海鳥と魚の体内から見つかったプラスチックごみ

日本で初めてプラスチックごみを研究対象として扱ったのは海鳥の研究者たちです。海鳥は海面に漂流したプラスチックを餌と間違えて啄むため、死んだ鳥を解剖すると、お腹の中からプラスチックを見つけることができます。当初は、人間の食卓に上がらない海鳥での話題でしたので問題視されませんでしたが、後にウミガメや魚の体内からもマイクロプラスチックが発見されるようになり、マイクロプラスチック問題への認識は広がりました。

私たちは海岸に漂着したライターを回収し、そこに印刷されたお店の住所から流出場所を推定し、漂着地と繋げることで海ごみの流れを明らかにする「ライタープロジェクト7を1998年から始めました。

2011年には、ミッドウェー環礁で島内に散乱する100円ライター1,000本を分析する機会を得ました。このライターは、産卵・子育てをするコアホウドリの親鳥が海面で誤って食べてき、それを与えられた雛鳥が巣立ちの前に吐き出したものです。分析の結果、このライターの起源は、日本の太平洋沿岸や台湾、中国の沿岸都市であることを突き止めました。

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出典:Regional Studies in Marine Science Volume 58, February 2023
 「The drift lighter project — Estimation of drifting range and source of North Pacific marine litter using disposable lighters washed up on coasts」
 DOI: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2352485522003565?via%3Dihub

プラスチックごみは日本に漂着するだけでも問題ですが、黒潮などの海流に乗って太平洋を漂流します。そのため太平洋上に生息する海鳥たちがそれを食べるという事実があります。

コアホウドリのように大きなプラスチックを丸呑みする以外にも、海鳥の体内には、飲み込んだ砂礫(されき)を使って食物を砕く砂嚢(さのう)という消化器官があります。そこにプラスチックの破片も溜まります。

また、水産高校や大学の練習船・実習船の協力を得てマグロの誤食についても調査しました。その結果、釣られたマグロの胃袋からもプラスチックが発見されました。ただし、このマグロは釣られるまでは元気に泳いでいましたので、その後、おいしくいただきました。

私が講演で「魚もプラスチックを食べている」と話すと、「もう魚は食べられない」と言う方がいます。その際には、「私は魚から栄養を摂取したいので、魚を食べ続けます」とお答えしています。水産業への風評被害が広がらないことを願っています。

実際、私たちの周りの空気中にも大量のマイクロプラスチックが存在し、誰もが普段からそれを吸っています。コロナ禍において多くの人が使用していたマスクも、主にプラスチック素材です。そのため、微細なプラスチックの破片が体内に入っている可能性もありますが、食べて良いものと悪いものの分別ができる人間はプラスチックを詰まらせて死ぬことはないでしょう。

むしろ、タバコや糖などによる健康リスクを考慮した方が良いと考えています。私は、プラスチックが体に与える直接的な影響を過度に強調することには懐疑的です。

漂着物学会の概要と活動について

漂着物学会8は2001年に設立され、20年以上の歴史を持つ学会です。海岸に漂着するさまざまなものを研究したり、収集活動を行ったり、芸術的な取り組みを通じて楽しむことを目的としています。漂着物学会には、研究者だけでなく、コレクターとして貝殻を拾い集める人、芸術作品の材料として漂着物を利用する人、漂着物をテーマにした音楽活動をしている方など、多様なメンバーが集まっています。それぞれが異なる視点で漂着物を見つけ、手に取り、多様な人々が集まることで新しい発展が生まれるという考えから、この学問の場が形成されました。幅広い関心を持つ人々の集まりであることが、学会の魅力です。現在、全国に約300名の個人会員が在籍しています。

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また毎年秋には研究会を開催しています。今年(2024年)は、島根県隠岐島で開催9される予定です。隠岐島は、付近を対馬暖流が流れる島で、漂着物を集める会員にとっては非常に興味深い場所です。漂着物はどの海岸にも流れ着くため、すべての海岸が学会の会場となり得ます。多くの人がハワイに行ってみたいという気持ちを持ち、また観光で行くこともあるでしょう。一方で、隠岐島などの離島や国内辺境地には、一般の人にとって行く理由がありません。漂着物は、通常行かない場所に行く理由を与えてくれる魅力もあります。

海外でも漂着物を集める活動が行われています。「ビーチコーミング」(Beach Combing)と呼ばれる活動では、海岸を詳細に探しながら漂着物を集める人々がいます。

例えば、アメリカの西海岸では海流の影響で漂着物が少なく、非常にきれいな海岸が広がっています。そこで見つかるものはすべて珍しいとされ、参加者は一つ一つを宝のように大切にしています。逆に東アジアでは、常にさまざまなものが流れ込んでくるため、その中からお宝を探すといったイメージがあります。このように、地域によって漂着物の特徴が異なるため、各国でさまざまな視点で漂着物を楽しむ人々がいるようです。

南九州・南西諸島域イノベーションセンターについて

鹿児島大学の南九州・南西諸島域イノベーションセンター10は、地域課題を解決する部門と、大学の研究成果を社会に実装していくという部門から成り立っていた産学地域共創センターに、研究支援を行う部門が加わったものです。研究の支援から、その成果を最終的に社会にライセンスしていったり新しい事業を作っていったりするという、全体を一気通貫で行うためのセンターとなりました。

企業に対し「このような研究があるので使ってみませんか」というような営業を行ったり、対外的にお話をする中で分かった企業のニーズを、先生方に伝えたりしています。また、先生方が何らかの理由で会社を作りたいと希望されている場合には、そのための手法の紹介もしています。現在は17名のスタッフが在籍しています。

2016年、 「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン11」が文部科学省と経済産業省により策定されたのですが、その中に、大学は授業料だけでなく、企業等との共同研究等々によって外部からお金を取って研究活動を進めるべきだとの指針があります。

これまでも大学の研究者は共同研究という形で企業と一緒に研究をしてきましたが、その際に必要経費だけを請求してきたという経緯があります。実験の試薬や機械の購入費、旅費などといった経費のみを計上していて、研究者の頭の中身については全然、現金化してこなかったのです。そこがもったいないという指摘ですね。大学の先生方の頭の中身=「知」をしっかりとお金に変えていきましょうということです。それも大学の価値だということで大学の研究活動も大きく変わってきたのです。

相談に来られる案件への対応もしています。研究前に何をどうすればよいかというような相談や、社員教育をセミナーのような形式で研究者に依頼したいといった相談です。

今までは先生方に個別に謝金が払われてセミナーが行われるようなケースがありましたが、その場合、本業とはみなされないため先生方は年休を取っていかなければなりません。しかし企業が大学と契約し、先生方が大学の業務の中でそういう活動をするということになれば、大学は対価を受領してそれを先生方に研究費として返すことができます。所属する研究者が大学の業務として外部と仕事ができるようになりますので、その研究者の知がどのぐらい生かされているかの評価も大学内で行えるようになります。自身のキャリア構築にもつながるので、新たな制度として現在、本学以外でも多くの大学でこうした制度が始まっています。企業にとっても、こういう制度を活用することで、お金はかかりますが、簡単に様々な相談をできるようになりました。

若手研究者へのメッセージ

研究によって社会を変えることは難しいです。またボランティア活動によって人々の行動を変えることも難しいです。いずれもその挑戦自体は非常に重要です。ぜひ、これからの研究者には社会課題解決に向けた一人一人の行動を生み出す取り組みにチャレンジしてほしいです。

海ごみに関しては、ごみそのものはマイナスですが、その改善に向けた活動はプラスの影響をもたらします。特にボランティア活動は、みんなで協力して取り組むことで、参加者はその成果を素晴らしい思い出として持ち帰ります。ごみだらけの海岸という記憶よりも、そこで一生懸命に活動したというポジティブな思い出や温かい人との出会いが残ります

なので困ったときには手を挙げて、助けてくださいと声を出しましょう。地域外の人たちと一緒に活動することが、長い目で見て一番良い方法だと感じています。以上が、最近、私が研究活動とボランティア活動について考えていることです。

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脚注:
1 1997年1月2日、ロシア船籍のタンカー「ナホトカ号」が島根県沖で沈没したことにより多量の重油が日本海に流出した。重油が漂着した海岸地域で地元住民や自衛隊の他、全国から集まったボランティアが回収作業にあたった。
2 2009年7月15日施行。正式名称は「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」 https://www.env.go.jp/water/marine_litter/law.html
3 Marine Pollution Bulletin Volume 172, November 2021 Standing stock and mass balance of marine litter in the Seto Inland Sea, Japan https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0025326X21009577?via%3Dihub
4 一般社団法人JEAN(Japan Environmental Action Network)。海洋ごみの調査やクリーンアップキャンペーン・普及啓発・情報発信等、海のごみ問題解決のために活動する非営利の環境NGO。1990年「国際海岸クリーンアップ」の日本での実施呼びかけをきっかけに任意団体として発足。2024年10月現在、藤枝先生は同団体の代表理事を務めている。
https://www.jean.jp/
5 Richard Thompsonプリマス大学海洋研究所所長
6 Lost at sea: where is all the plastic?、 RC Thompson、 Y Olsen、 RP Mitchell、 A Davis、 SJ Rowland、 AWG John、 ...、 Science 304 (5672)、 838-838
https://scholar.google.co.uk/citations?view_op=view_citation&hl=en&user=S0yQ-JgAAAAJ&citation_for_view=S0yQ-JgAAAAJ:hFOr9nPyWt4C
7 Regional Studies in Marine Science Volume 58, February 2023 The drift lighter project — Estimation of drifting range and source of North Pacific marine litter using disposable lighters washed up on coasts
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2352485522003565?via%3Dihub
8 漂着物学会
https://drift-japan.net/
9 漂着物学会ウェブサイト 第23回漂着物学会 島根・隠岐島大会が開催されました
https://drift-japan.net/?p=2540
10 国立大学法人 鹿児島大学 南九州・南西諸島域イノベーションセンター
https://www.krcc.kagoshima-u.ac.jp/
11 「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/12/27/1380912_02.pdf およびその追補版 https://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/sangakurenkei/230329_UPDATED_guideline_add.pdf

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藤枝 繁(ふじえだしげる)教授

鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット 教授

一般社団法人JEAN代表理事、漂着物学会事務局長

[経歴]
1992年度 – 2000年度 鹿児島大学水産学部助手
2000年度 – 2010年度 鹿児島大学水産学部助教授
2010年度 – 2014年度 鹿児島大学水産学部教授
2015年度―2018年度 KEYTEC株式会社
2018年度 鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター センター長

[専門]
海洋ごみに関する研究