大気汚染物質であるエアロゾルは気候変動にも大きな影響を及ぼす。そのプロセスは大きく分けて2つある。
1つはエネルギーのやりとりに直接及ぼす影響で「エアロゾル–放射相互作用」とよばれている。地球上に入ってくるエネルギーと出ていくエネルギーが等しければ、気候はほとんど変化しないはずだが、このバランスが崩れると気候変動を引き起こす。たとえば、光化学スモッグが出ている際に空が白っぽく見えることがあるが、これは硫酸塩や硝酸塩のように透明なエアロゾルに太陽光が当たり散乱するためである。この時、太陽光からのエネルギーもエアロゾルによって跳ね返されるので、地球に入ってくるエネルギーは減少する。一方、すすのように黒っぽいエアロゾルの場合は、光を散乱させるだけでなく、エネルギーを吸収するため、散乱するエネルギーの量は少なくなる。
もう1つは「エアロゾル–雲相互作用」とよばれるものだ。実は地球上の雲というのは、どんなに湿度が高くても微粒子が存在しなければ形成されない。微粒子であるエアロゾルが核となって周りに水蒸気がついて雲粒が生成され、成長して雲となる。水蒸気の量が等しいと仮定した場合、エアロゾルが多いほど雲粒が多くなり、太陽の光を遮るので、より多くのエネルギーが遮断される。また、雲はやがて雨を降らせるため、エネルギー収支だけでなく雨量にも影響を及ぼす。
いずれの相互作用を介しても、エアロゾルが増えれば増えるほど太陽の光を散乱することになり、地球を冷やす効果が高くなると考えられている。
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竹村俊彦博士へのインタビュー・前編では、数値モデルSPRINTARSとエアロゾルの概要についてお話いただいています。
竹村俊彦博士へのインタビュー・後編では、研究の醍醐味や学術界への提言について伺います。